住友商事グローバルメタルズ株式会社
代表取締役社長
坂田 一成
※内容はインタビュー当時のものです。
私は過去に、3回の事業会社勤務を経験しています。初回は営業担当者としてタイへ、次のシンガポールでは営業責任者として。そして3回目の駐在であるメキシコには社長として赴任しました。北米の大手自動車・電機メーカー向けに製品を生産する事業会社で、設立以来厳しい業績が続いており建て直しが急務。着任直後の半年は東京本社との会議に追われ、社内、社員にしっかりと向き合っていたかというと、そうではなかったかもしれません。しかし、年末に社内のクリスマスパーティーが開催された際、社員の家族も含め約300名の前で挨拶をした私は、一人ひとりの笑顔を見て、「この会社は彼らの暮らしを支えている」と改めて自らの責任の重さに気が付きました。その後、2008年にはメキシコ発の深刻な伝染病が北米大陸を襲いました。家族はすでに避難帰国しており、派遣員にも本社から明日にでも帰国指示が出されそうな状況のなか、社員は全員出社し操業を続行。外国人であるという理由で社長だけが職務を放棄するわけにはいきません。「会社が操業する限りメキシコに留まろう」と腹をくくりました。幸い帰国指示には至りませんでしたが、社長の責任の重さ、判断の重さを学びました。
私たちの強みは、住友商事のアセット・リソース・ネットワークをフルに活用できること。一方で金属事業の専門商社として専門性を発揮し、グローバルパートナーとの事業投資も行っています。しかし今は、過去に手がけてきたビジネスを踏襲するだけでは立ち行かない不透明な時代。クレジットカードの時代を飛び越え、キャッシュレス社会となった国が存在するように、新興国の急成長ぶりは、かつてのスタンダードな成長ステップとは明らかに異なっています。なぜそのような現象が起こったのか、そこにはどのような可能性とリスクが潜んでいるのかなど、政治・経済の知見、リスク検証のスキルやマネジメントのノウハウを持っていなければ、その国・地域でのビジネスは成功しません。だからこそ、住友商事グローバルメタルズは「金属のプロフェッショナル集団」として、経営者・社員を問わず全員が学び続ける意志を持つ。そして新たな価値創造に挑戦しながら、ステークホルダーとともに成長する。そのような企業を目指したいと考えています。
不透明な時代においてなお新たな価値創造を目指すには、私たち全員が「自らを成長させたい」という渇望感を持つことです。ビジネス経験のない学生のみなさんであっても、それは可能です。むやみに将来に目をやるのではなく、自分の足元を見つめ、深く掘り下げて考え、自分に何が足りないかを理解すること。使われている言葉が分からないまま、ただ新聞を斜め読みするのではなく、一つの記事でもいいので疑問がなくなるところまで調べ、内容を掘り下げる。それだけでも相当な訓練を積んで社会に出ることになるはずです。これからの時代に合った知識・経験を身につけ、人間性を磨き、ステークホルダーの信頼を勝ち取るという意味では、むしろみなさんにこそアドバンテージがあるかもしれない。自己成長に対する渇望感を持ち、住友商事グローバルメタルズというステージで活躍されることを期待しています。