2025.1.22

北米の鉄道用合成マクラギ製造会社Evertrakに出資~廃棄プラスチックを主原料とするマクラギにより環境負荷を低減~

住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は、子会社であるSumitomo Corporation of Americas(以下、2社を総称して「住友商事グループ」)を通じて、北米の貨物鉄道市場を対象に合成マクラギ(注1)を製造・販売する米国のEvertrak社に出資し、戦略的パートナーシップを締結しました。

住友商事グローバルメタルズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 :村上 宏)は、住友商事鉄鋼グループ傘下の関係会社の運営・管理、並びに住友商事海外地域組織の鋼材事業の戦略立案・推進等に関与しており、今後、Evertrak社の運営・管理等にも関与していくこととなります。

北米貨物鉄道業界における環境課題
北米貨物鉄道業界では、米国南東部の高腐食エリア(High Decay Zone)を中心に、高温多湿による木製マクラギの早期腐敗が課題となっています。(米国における地域毎の木材腐食の深刻度合を示した米国Wood Dacay Zonesを参照)この影響で、木製マクラギの交換や廃棄処理の頻度が増加し、コスト面と環境面の両方で負担が高まっています。これらの課題に対応するため、業界ではよりサステナブルな代替マクラギとしての従来の木製マクラギから合成マクラギへの展開が進められています。合成マクラギは、廃棄プラスチックとグラスファイバーを原料としており、木製マクラギと比較した時の優位性として、環境性能、長寿命性、中長期でのコストメリットがあげられます。また、使用後も100%リサイクルが可能となります。

米国 Wood Decay Zones

北米マクラギ市場 / 合成マクラギ市場
年間マクラギ交換本数:約2千万本(北米全体)
合成マクラギ対象エリア:約600万本/年(高腐食エリアHigh Decay Zone)

Evertrakの強み
Evertrakは、2017年に設立されたアメリカ・ミズーリ州セントルイスに拠点を置く合成マクラギ製造会社です。同社の独自技術によって製造される「Evertrak 7000」は、High Decay Zoneにおける木マクラギの平均耐用年数約8-12年に対して、50年超の耐用年数を誇ります。北米鉄道業界では2000年代初頭から合成マクラギの導入が検討されていましたが、厳しい品質基準やコスト面での対応が課題となっていました。こうした長年の課題に対し、Evertrakは、厳しい品質要件を満たし、中長期的なコストメリットも期待できる「Evertrak 7000」を開発、Class 1(注2)鉄道会社による量産導入が開始されています。

これまでの北米貨物鉄道事業の取り組みと出資の目的
住友商事グループは、鉄鋼グループを中心に、レールの輸出やタイプレート、車輪・車軸の製造・販売などを通じて、北米貨物鉄道輸送を支えてきました。Evertrakとは、持続可能な鉄道インフラ構築の戦略が両社で一致したことに加え、既存鉄道資機材事業とのシナジーが期待できることから、今回の出資に至りました。今後は、同社の生産能力を向上させ、事業規模を拡大していきます。

今後の展開
貨物鉄道は輸送機関の中でCO2排出量が少なく、長距離大量輸送の観点でも北米貨物物流を支える重要な輸送手段となっています。住友商事グループは、世界最大の鉄道貨物市場である北米において、鉄道資機材納入をはじめとしたソリューションを通じて、持続可能な鉄道インフラの構築に貢献していきます。

<参考資料>
【Evertrak概要】
会社名      :Evertrak
設立年      :2017年
CEO/創設者 :Tim Noonan
本社所在地 :米国ミズーリ州セントルイス
工場所在地 :1拠点(セントルイス)
事業内容  :合成マクラギの製造・販売
ウェブサイト:https://evertrak.com/

注1)木マクラギに代わる鉄道用マクラギとして、主に廃棄プラスチックを原料として製造されるマクラギ。使用後も100%リサイクルが可能。日本の鉄道業界では、すでに木製以外のコンクリート製や合成樹脂製が普及していることに加え、視認性向上や一般乗客への配慮から、漢字ではなくカタカナの「マクラギ」の表記を使用。

注2)北米の鉄道業界における Class 1 とは、米国、カナダ、メキシコで運行される鉄道会社の中で、主要な貨物鉄道会社の7社。この分類は、鉄道会社の年間収益を基準に米国運輸統計局(Surface Transportation Board, STB)が制定する。