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変わる世界で、その手は、何をつかむのか

リーダー対談

部署横断型で切り拓く
未来のビジネス

鉄鋼商社を取り巻く環境が激変するなか、
SCGMでは現場レベルから新たな挑戦への
気運が高まっている。
それを象徴するのが、2020年からスタートした
「気候変動対応のビジネス創出ワーキンググループ
(以下、ワーキンググループ)」だ。
リーダーを務める二人に、このワーキンググループの
目的や意義について語ってもらった。

PROFILE基幹職

厚板建材事業部 事業開発チーム

猪狩 元嗣

1991年入社。法学部卒。「世界各地に赴き、いろいろな人と出会い、多様な経験がしたい」と商社を志望。入社後は石油・ガス用鋼管のトレードに携わり、20代半ばから40代半ばにかけて、カタール、イラン、サウジアラビアでの駐在を計10年経験。その後、ロンドンの現地法人に赴任し、スタートアップ企業への投資などを手がけ、そこで再生可能エネルギーに関わる。その経験をもとに、現在は本社にて再生エネルギー関連の事業開発のチームを率いている。

PROFILE基幹職

海外薄板事業第一部 海外薄板第三チーム

黒見 明広

1997年入社。工学部卒。就職活動時、「自分は多くの人と関わることで成長できた」という思いから、理工系出身ながら商社を志望。棒線のトレードからキャリアをスタートし、韓国での語学研修と駐在で計6年間を経て、薄板のトレードと海外事業会社の経営管理に従事。2014年からUAEの事業会社の社長を5年間務める。帰国後は韓国・中国・台湾への薄板トレードと事業会社管理を2年ほど手がけ、現在は西南アジア・中東・アフリカ・欧州向け薄板トレードおよび海外事業会社管理を担当するチームのリーダーを担う。

※掲載内容は、インタビュー当時のものです。

ワーキンググループとは
既存事業の枠組みを超え、部署横断で社会課題に対して新たなビジネスを創出することを目的に立ち上がった組織。今、世界が直面し、重大な危機をもたらしている「気候変動」をターゲットに、「風力発電関連」「カーボンマネジメント」「グリーンスチール」の3つのテーマで課題解決につながる新規事業を立案・推進。「風力発電関連」のサブワーキング・グループは猪狩が、「カーボンマネジメント」「グリーンスチール」のサブワーキング・グループは黒見がリーダーを務めている。

THEME 01

THEME 01
我々は、このまま鉄を売り続けるだけでいいのか。

猪狩

このワーキンググループは、実は若手から上がった声をきっかけにスタートしました。20代前半から30代はじめまでの社員が、「このまま鉄を売るだけでいいのか」「社会課題の解決をもっと意識すべきではないか」と我々に問いかけてきたのが発端でした。

黒見

若手でも上層部に対して堂々と意見を言えるのは、企業として健全である証ですよね。特に最近入社した若手はみな志が高く、こちらも大いに触発されます。

猪狩

その若いメンバーたちが特に問題意識を持っていたのが「気候変動」。我々が扱う「鉄」というのは、地球温暖化をもたらすCO2を製造時に大量に排出してしまう製品であり、自分たちのビジネスが社会に対してネガティブなインパクトを与えるのではないかという危機感を抱いていました。

黒見

それは私も大いに同意するところで、今の世界の動きを見ると、これからのビジネスはカーボンニュートラルを抜きにしては語れない。しかし、我々の商材である鉄に限らず、実現のためのハードルは非常に高く、有効な解決策をなかなか見出せないのが現状です。

猪狩

同じく自分たちのビジネスの将来に危機感を持っていたリーダークラス有志で協議して、「気候変動問題の解決に貢献する新事業をつくり出していこう」「そのために部門の枠を超えた新組織を立ち上げよう」という意見をまとめ、社長を含めた経営陣に提案したところ、「まず社内横断でワーキンググループを設けて新事業を検討してはどうか。そのための予算もつける」と当時の経営陣が積極的に後押ししてくれました。つまりは若手から経営陣に至るまで同じ危機感を実はそれぞれに抱いていて、それが若手からの意見表明をきっかけに組織としての行動につながったということでしたね。

黒見

それで正式にワーキンググループが発足し、気候変動問題の解決に向けて「風力発電関連」「カーボンマネジメント」「グリーンスチール」の3つのテーマでそれぞれサブグループが設けられ、今、活動を推進しています。

猪狩

我々としては、このワーキンググループを単なる勉強会としてはダメで、事業化して収益を上げる種を輩出する基盤をつくるところまで持っていかなければと思っていました。というのも、気候変動問題はこれから人類がずっと立ち向かわなければならない課題であり、決して一過性のものではなく、無数にある解決案は、実は継続するビジネスの宝庫だということを、リーダークラスの打ち合わせの初期段階で認識していたからです。経営陣も、気候変動問題は経営の制約条件ではないとの同じ認識を持ちはじめ、いよいよ社内に大きな動きが生まれていきました。

THEME 02

THEME 02
このチャレンジは、
必ず社会への貢献につながる。

黒見

このワーキンググループは、公募によって各本部からメンバーを集め、定期的に会合を重ねて新事業の企画開発を進めています。20代30代の若手社員も積極的に参加してくれていますが、猪狩さんの「風力発電関連」のサブワーキング・グループではどんな動きをしていますか?

猪狩

「風力発電関連」では、陸上や洋上での風力発電施設の建設をビジネスにつなげようとしています。単純にメーカーを担いで資材を供給するというのではなく、プロジェクトの主要なサプライチェーン・プレイヤーとして我々も施設の企画開発から関わり、風力発電を広く普及させることを目標に掲げています。黒見さんのサブワーキング・グループの方はいかがですか?

黒見

私は二つのサブワーキング・グループを率いていますが、そのうち「カーボンマネジメント」ではCO2削減を進めるうえで一丁目一番地であるCO2の「算出・見える化」に取り組んでいます。もう一つの「グリーンスチール」は、温室効果ガスを極力発生しない方法で製造された鉄鋼のサプライチェーンを構築して事業化することを目指しています。
詳しくは「SPECIAL:SOLUTION 01」もご覧ください

猪狩

ワーキンググループに参加しているメンバーは、それぞれ所属する本部で担当業務を抱えていて、両立しながら新事業の創出に挑んでいます。本部長・部長の配慮を得ながらとはいえ実に大変ですが、それでもみなモチベーション高く取り組んでいるのは、このチャレンジはビジネスとしても成功する可能性が相対的に高く、そして成功したら必ず社会に貢献できるという確信があるから。

黒見

気候変動ビジネスは、これからの時代に残された有望な成長領域ですよね。特に再生可能エネルギー関連産業は毎年、日本だけでも兆円単位の新たな市場が生まれていくと見込まれています。

猪狩

その一つが風力発電なのですが、周囲を海に囲まれた日本では、洋上の風力発電は自国で再生可能エネルギーを大量に産出できる数少ない選択肢。特に、浮体式の洋上風力発電設備を近海の可能な場所に設置すれば、日本全体が必要とする量の6倍の電力を供給できるという試算もある。その需要以上の電力を使って再生可能なエネルギー源である水素やアンモニアを製造すれば、これまで資源に乏しかった日本が逆にエネルギーの輸出国にすらなることができるのです。こうした風力発電設備を地域の皆さんや他のステークホルダーとWin-Winとなるように話し合った末に各地方で立ち上げ、再生可能エネルギーを地産地消できる仕組みをつくれば、地域に利益と雇用をもたらし、国の補助に頼らずとも経済を活性化できる。これは本当に意義のあるチャレンジだと思います。

黒見

私が取り組む「カーボンマネジメント」も、これからいっそう重要になるのは間違いありません。すでに欧州の国々では、CO2を排出する化石燃料や電気の使用量に応じて税金が課せられており、早晩日本でも同様の仕組みが取り入れられる可能性が大きい。企業間でCO2排出がコストと捉えられるようになり、それを可視化し削減していくニーズはますます高まっていくものと考えています。一方「グリーンスチール」も、ここ1~2年で導入に向けての意識が加速度的に高まっており、サプライチェーン構築が本格化しようとしている。このワーキンググループを通して、社会に貢献しながら持続的に発展するビジネスを自ら主導してつくり出せることに、とてもやりがいを感じています。今すぐ収益に結びつかなくても、5年後10年後に「このビジネスがあるのは黒見たちのおかげだ」と言われるような、そんな仕事をぜひ成し遂げたいですね。

THEME 03

THEME 03
0から1をつくる経験を、
若い人たちと分かち合いたい。

猪狩

このワーキンググループは新事業の創出を目指しているわけですが、そこで求められるのは仮説と検証をひたすら繰り返して正解をつくっていくことです。正解は探すものではなく、つくるものです。それは、通常業務ではなかなか経験できないことであり、若いメンバーたちも大いに刺激を受けています。ここで発想力を磨いて事業創出のメソドロジーを身につければ、本業にも良い影響を及ぼすのではないかと期待しています。

黒見

まさにその通り、ここでのミッションは0から1をつくり出すことであり、トレードなどの通常業務とはまったく世界が違う。自分の知らない分野にも果敢にアプローチして、新たな知見をどんどん取り込んで考え抜かなければならない。我々は住友商事100%出資による戦略企業で、住友商事グループのリソースをフルに活用できるのが我々の強みの一つ。必要な知見はいくらでも手に入る。また、もう一つの強みとして我々自身も膨大な取引先を抱えているので、その顧客のカーボンニュートラルに対する動きをタイムリーにつかみ、その課題を解決するため、たとえば、有力なパートナーとタッグを組むことで未知の市場にも進出できるかもしれない。このワーキンググループに身を置けば、自らビジネスを企画実行できる力が自ずと身につき、鍛えられると思いますね。

猪狩

「0→1」を組織的に経験できる機会は本当に貴重だと思いますし、このワーキンググループは定期的に社内で新しいメンバーを募って活動を継続しているので、今後も若い人たちをどんどん迎え入れたいですね。

黒見

未来に向けて社会がどう変化していくのか、気候変動がもたらす影響もそうですが、まったく見えないのが実情です。だからこそ、絶えず世界に目を向けて問題意識を持ち、仮説検証を重ねていくことが重要。そして、常に新しいビジネスを次々と考えて、並行して繰り広げていかなければならない。かつては、諸先輩方が築いてきたビジネスモデルをそのまま継承していればよかったのですが、今はビジネスの賞味期限がとても早くなり、有望だと目された事業もあっという間に廃れてしまう。いくつものビジネスを同時並行で進めなければ、我々の経営が成り立たない時代になりつつあります。

猪狩

そう。我々はよく自分たちの仕事を「皿回し」に例えるのですが、これからの商社ビジネスはいかに多くの皿を回せるかがが重要。でも経験を重ねて熟練すると、回しやすい皿を選ぶようになる。歳をとるとどうしても安易な方向に進んでしまいがちです。反面、若い人たちは経験がないので、無理だと思えるような皿でも構わず回しはじめる。無理とかスキルとかコスパとかまったく考えず、持続的に利益を上げて社会貢献するビジネスになることだけを考えて、次々と皿を回していく、そんな人がいないと次のビジネスは生まれないし、ワーキンググループでもそうしたチャレンジを期待しています。

黒見

挑戦した結果、皿が落ちて割れてしまっても、それはそれで良い苦い経験。SCGMはそれを許容してくれる会社です。我々が取り組んでいるのは、決して楽なビジネスではありませんが、好奇心をもって逆にそれを楽しめる方をぜひ仲間としてお迎えしたいですね。